今年の1月30日、NHK総合で山口百恵の特集番組「伝説のコンサート“山口百恵 1980.10.5 日本武道館”」が放送され、改めて山口百恵という人の生き方が注目されています。
百恵さんが芸能界で活躍されていた頃、現在アラフィフの私たちは小学生か中学生くらい。当時の「百恵ちゃん」のことは記憶にありますが、今放送を見てみると、その頃の印象とはずいぶん違っている事に気づきました。
今回の記事では改めて山口百恵さんについて感じた事。そしてその時代に想いを寄せ、感じたことを綴ってみました。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
山口百恵という人
さよならコンサートの放映を観て、子供の頃には分からなかった山口百恵という人のスゴさを感じずにはいられませんでした。静かだけど凛とした強さ、MCで発する言葉の奥深さ、心にしみる歌声…当時21歳の女の子とは思えないほどの、圧倒的な存在感です。
この人はどんな人なのか?どんなふうに生きてきたのか?山口百恵という人をもっと知りたいと強く感じました。
デビュー
山口百恵さんは、1973年4月、映画『としごろ』に出演し、5月21日に同名の曲で歌手としてもデビューしました。1972年12月に行われたオーディション番組『スター誕生!』への出演応募をきっかけです。
芸能活動
百恵さんの芸能活動は 、14歳でデビューし、21歳で引退するまでの7年間です。その間歌手として、女優として大活躍しました。
引退
1979年10月、「私が好きな人は、三浦友和さんです」と、三浦との恋人宣言をリサイタルで突如発表。翌1980年3月7日には三浦との婚約発表と同時に芸能界引退を公表しました。
「我儘な…生き方を私は選びました。(中略)お仕事は全面的に引退させて頂きます」という言葉が印象的で、当時のテレビニュースを今でも覚えています。
そして同年10月に行われたのが、前述した日本武道館でのさよならコンサートです。
自伝『蒼い時』
山口百恵さんについて知るためには、彼女自身が引退時に書いた唯一の自伝『蒼い時』を読むのが一番かもしれません。『蒼い時』には彼女の出生から生い立ち、両親や家族、仕事に対する葛藤、結婚、引退までを正直に、表現力豊かに記されています。
内容はかなり衝撃的ですが、文章の美しさや、自らの内面と真剣に向き合う姿勢がとても印象的でした。若干21歳でこの人はどれほど重いものを背負ってきたのかな…と。そして、困難や自分の置かれた状況を客観的に見つめ、対峙する姿に、「この人は本当に聡明で真っ直ぐなひとなんだろうな」と感じました。
聴覚から視覚へ意識を戻した時、窓全体があおかった。その『あお』は、私にとっては『青』ではない『蒼』という字のそれだった。
出典:山口百恵『蒼い時』より
表題となった『蒼い時』とは、夜から朝にかわる夜明け前の時間のこと。芸能界を卒業し、三浦友和さんの妻である一人の女性として生きていく狭間の時を表現しているのかもしれません。
この本は芸能人のエッセイの枠を超え、優れた小説のような作品であり、今でもベストセラーとして売れ続けています。一人の女性が重い過去を背負いながら新しく自立していく姿に、私たちアラフィフ世代も共感できる内容だと感じました。良かったら読んでみてくださいね。
山口百恵がいた時代
山口百恵さんは70年代を代表する歌手・女優です。70年代は家電やマイカーが家庭に浸透し、国民の間に中流意識が芽生え、「一億総中流化」という言葉が完成された頃ですね。文化・芸能分野では、映像産業のメインが映画からテレビに移行していくテレビ黄金時代と言えるでしょう。
夜のヒットスタジオ・引退特集番組を観て
そんなテレビ黄金時代を垣間見る事ができる動画を見つけました。
ファイナルコンサートの翌日である10月6日に放送された『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ)。山口百恵さんの引退特集番組です。
司会者の芳村真理・井上順のほか、和田アキ子、中三トリオの桜田淳子と森昌子、仲良しのアン・ルイス・岩崎宏美・太田裕美・小柳ルミ子など。男性歌手では五木ひろし・沢田研二をはじめ「新御三家」の郷ひろみ・西城秀樹・野口五郎などが、百恵さんの最後の姿を見守っていました。
この動画を見て、当時のテレビ番組の贅沢さを、今更ながら実感しました。
- 生放送・生演奏ってスゴイ!
- 歌手の人それぞれ個性があって歌がうまい!
- 歌手の人が個々にリスペクトしあっている感じが素敵!
- ジュリーが美しい!!
などなど色々ありますが、何より皆が百恵さんの結婚を祝福し、引退を惜しむ温かさが番組を通して感じられます。メイクさんやスタイリストさんなどの裏方さんまで、延々と一輪のバラを渡し続ける映像にとても感動しました。
そして、山口百恵さんの表情の豊かさがとても印象的でした。
”この人は、一人一人とても大切に付き合ってきたのだろうな”と感じさせるほど、個々の相手に向ける眼差しが違っていて、それぞれの人間関係や距離感を垣間見ることができます。
子供の頃、私は山口百恵さんをとてもクールな人だと思っていました。当時の自分の感受性の乏しさにビックリです(笑)
最後に
特に深い意味はないのですが、 ”山口百恵さんが自伝を出した” という事にちょっとした違和感がありました。この人は、自分を語るというイメージがなかったからかもしれません。
しかし『蒼い時』を読んで、これは彼女なりの決意と覚悟、うまく言えませんがケジメのようなものなのかな?と感じました。
さよならコンサートで舞台の上に白いマイクを置いて去る姿にも、『蒼い時』にご自身の心中をストレートに書き綴ることも、芸能界には戻らないという強い決意と覚悟が感じられます。
この人は常にご自身の内面と向き合い、「何が自分に必要なのか?」「1番大切にしたいのは何なのか?」を自らに問い、その上で選んだ道を貫徹する意思の強さを感じます。
山口百恵という人に強い興味を持ってから数週間という短い時間ですが、心に受け取るものがとても多いことに感謝しています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。